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不定期連載 さゆみんとわたし 第1回 「ピンク」

ピンクはあんまり好きじゃなかった。


服どころか小物に至るまで、ピンク色のものなんて一つも持っていなかった。
ファンクラブの通販で購入した道重依存Tシャツ。
梱包から取り出し、ひとまずハンガーにかけて眺めてみる。 大きくのびのびと力強く、しかし、丸みを帯びてかわいらしい手書きの文字。 
字は人を表す、ほんとうにそうだな、と思う。

 

ひとりの部屋でこっそり袖を通してみる。
鏡に映る、全然好きじゃなかったピンク色を着てる自分。やっぱり気恥ずかしかったけど、それ以上に誇らしい気持ちでいっぱいだった。
中途半端だったわたしは、道重さんのおかげでやっとヲタクになれた。そのことがすごく嬉しかった。

道重さんに出会うまでは、約2年間スタダを推していた。他にも、良曲を探したり、行ける範囲で現場があればふらっと見に行ったりした。 

ももクロが拡大するにつれて昔ほど純粋な熱意を持てなくなり、そんな自分を残念に思った。 夢中だったけど、結局はサブカル趣味の一環だったんだろうなと今は思う。

このまま他のどのグループにも興味を持てなかったら卒ヲタしようと、偏見を無くして片っぱしからいろんなアイドルを聴いてみることにした。


モーニング娘。に出会ったのは、その過程のだいぶ後の方だった。
モー娘。は「知ってる」から。けど、わたしはモー娘。のことを何も知らなかったことに気づく。
面白かった。 
独自性に富んだ楽曲、歌詞のセンス、目まぐるしく変わるメンバー構成。縦社会。受け継がれる物語。どれもが新鮮だった。 
2013年夏。あまちゃんを一生懸命見ながら、毎日貪るようにハロプロ楽曲を聴きあさり、膨大な帝国の歴史を自分の中に落とし込んでいった。 
現役のモーニング娘。でわたしが知っているのは道重さんだけだった。「この人がいる内にこのグループを見ておかないと絶対後悔する。」 何かの啓示を受けたように強く思った。

それから程なくしてタイミング良くリリイベ、いきなり全員と握手ができた。
連日の移動で疲れていたのか、生ける伝説、道重さゆみは憔悴した表情だった。意外だった。
その日のブログには、いつものように前向きで元気な道重さんがいた。

しばらく、握手会での表情が頭から離れなかった。
いったい何がこの人を支えているんだろう。
こんなにも長い歳月、彼女を突き動かしつづけているものは何なんだろう。
そこまでして見たい景色はどんなものなんだろう。
もっと知りたいと思った。


道重さんのプロ意識には反するかもしれないけど、あの時もし神対応をされていたら、これほどまでに道重さゆみという人に惚れこむことは、おそらく無かっただろうなと思う。

その日から少しずつ、わたしの世界にピンク色が広がっていった。
夜空を照らす、たくさんの星のように。

 

(2015/2/5)