無意識に、山口への旅程を頭の中でなぞっているときがある。
新大阪で駅弁とお茶を買い、亀井さんのハロカバを聴きながら車窓を飛んでいく景色を眺め、新山口で降り、宇部線に乗り換える。
黄色い電車が見えるとワクワクして足早になる。
重い扉を手動で引き開けると、発車待ちまでの長い静寂に包まれる。学生たち。会社勤めの人。手土産を持った人。この土地で生まれ、生活を営む人たちの人生を勝手に想像する。
そうこうしているうちに常盤駅へ。
きらきら光る海。待合室の古い木の椅子。ペリカンの描かれた看板。カーブミラー。駅前に並ぶ自転車。
そこからは、記憶を常盤公園に飛ばしたり、常盤海水浴場(って言うらしい、あの砂浜。)に飛ばしたり。フジグランや、琴崎八幡宮。
昨年11月、ど平日に恐る恐る休暇を取り、3度目の山口へ出かけた。
この日は初心に帰るつもりで二十歳に買ったNikonのFM10を携えて行くことにし、そのおかげで、行きのコンビニで慌ててボタン電池を買い求めたり、雨の中で震えながらフィルム交換をしたり、散々な目にあった。
写真の仕上がりも散々だったけど、1枚を撮ることに慎重になったり、現像が終わるのを時間をつぶしながら楽しみに待ったり、ということを久しぶりに感じられた。
アルバムは手に取りやすいよう枕元の本棚に置いていて、寝る前に気が向いては見返したりしている。最近はスマホやデジカメで写真を撮ってもプリントすることが皆無に等しかったので、モノとしてそばにあることに新鮮な親しみを覚え、以前に山口を訪れたときの写真もアルバムを作ることにした。
また今夜も、記憶の中で里帰りをしよう。
(2016/2/12)