SAYUMINGLANDOLLに関する考察~写真集『Sayuminglandoll』を中心として~

はじめに

再生がすぐそこに近づいた今、ふと疑問に思うことがありました。

「SAYUMINGLANDOLL」って、どういう意味なのか。

公演名にもブログのタイトルにも起用されるほど、道重さゆみ(以降、さゆみん)にとって重要な意味を持つであろうこの言葉について、これまで自分が驚くほど無知でいたことに気づき、その手がかりを写真集『Sayuminglandoll』(2011年 ワニブックス)に求めてみることにしました。

尚、筆者のファン歴の浅さ故、検証に誤りのある可能性があることをご容赦くださいますようお願い申し上げます。

 

1.SAYUMINGLANDOLLとは

SAYUMINGLANDOLLの意味について、写真集発売当時のインタビューに以下の通り記述があります。

「わたしのあだ名の『さゆみん』と『ランド』と『ドール』をかけているんです」

「わたしはファンの方に『さゆみん』って呼んでほしいのですが、『しげさん』とかわいくないあだ名で呼ばれている。呼んでほしいあだ名が入っているのでうれしかったです」(*注1)本人考案の造語なのかについては明らかではありませんが、さゆみんの世界観が、この「SAYUMINGLANDOLL」という言葉には見事に集約されています。

まず「王国」について考えた時、さゆみんのふるさとである宇部のことが思い出されました。無人駅、ときわ公園、遊園地、空港、工場の煙突。道重家の末っ子として愛情を注がれた原風景。

次に、第二のふるさととも言えるハロー!プロジェクトについて。アイドルファンから「帝国」と称され、今も脈々と受け継がれる膨大な歴史。2012年のブログには、自らを「姫」とする文献も見受けられます。(*注2)

そのふたつの王国において、さゆみんは姫であろうとしたのではないでしょうか。

 

続いて「お人形」について。

パーソナルブック『Sayu』(2014年 ワニブックス)の中で、さゆみんは人形のコレクションを取り上げて紹介しています。

ここで着目したいのは「これは全部お母さんの趣味です。お母さんが持ってるものって全部可愛いので、私もすぐに好きになっちゃうんです。」という発言です。さゆみんの「かわいい」という概念の形成に、お母さんが大きく影響していることが伺えます。

そんなお母さんが、さゆみんにも可愛い服装をさせたかったであろうことは容易に想像ができますし、そのお人形役を、おそらくさゆみん自身も楽しんでいたのではないでしょうか。

さゆみん、王国、お人形。

これらのルーツが、SAYUMINGLANDOLLという言葉(というより、ひとつの思想)の根底に流れているように思います。

 

2.写真集『Sayuminlandoll』にみる道重さゆみの「かわいい」進化論

ブロンドヘアーのポップな女の子。60's風なレトロガール。毒のあるアリス。白と黒の世界。この写真集に写っているのは、本人すら知らなかった「さゆみん」の姿です。

先述のインタビュー(*注1)の中で、「これまでも極度にかわいかったが、かわいさの幅が広がった」と話しているように、ここではある種の実験が繰り広げられていて、自分でありながら自分でないという客観性に、森村 泰昌さん(*注3)や澤田知子さん(*注4)のセルフポートレートを連想しました。

ナルシストキャラでブレイクして以降、王国の外側の厳しさを身をもって感じたさゆみんは、同時に、「アイドル・道重さゆみ」をお人形として切り離し、楽しむ術を習得していったのかもしれません。

また、さゆみんはアイドルかつアイドル好きの先駆け(*注5)としても知られており、とにかく「かわいい」への探究心が人一倍強く、それが故に生まれるコンプレックスも少なからずあると思われます。ナルシストキャラは単なる自惚れではなく、コンプレックスへの処方でもあるというのがわたしの見解です。(ハロペディアさんに既に同じことが書かれていました…。(*注6))

かわいいの探求者であったさゆみんが、体現者へと成長を遂げたのがこの写真集『Sayuminlandoll』であり、それは後に伝道者へと、さらなる進化を続けてゆきます。

 

3・おわりに~王国の再生~

モーニング娘。としての歳月を経て「かわいい」の伝道者となったさゆみんは、余すところなく使命を果たし、2014年、ステージを後にしました。

それからおよそ2年4ヶ月。再びわたしたちの前に姿を現してくれることを選択してくれました。

制約がまったく無いとは言い切れませんが、これまでよりかは自由のきく環境にあって、どんな「かわいい」を、わたしたちに見せてくれるのか。どんな理想の王国を築きあげてゆくのか。

何よりさゆみん自身が楽しいと感じられ、際限なく愛されることを、国民のひとりとして切に願います。

 

 

1)シネマトゥデイ 自称「極度にかわいい」道重さゆみ、お尻と足のショットをメンバーに大絶賛され「顔が映ってないのに……」と不満顔!(2011年11月3日 )

2)道重さゆみオフィシャルブログ サユミンランドール 「さゆみ姫」(2012年11月17日)

3)作品紹介「森村泰昌」芸術研究所

4)Tomoko Sawada web

5)道重さゆみのエピソード-ハロペディア アイドル好き

6)道重さゆみのエピソード-ハロペディア 世界で一番かわいい

 

参考文献

道重さゆみ写真集『Sayuminglandoll』2011年 ワニブックス

道重さゆみパーソナルブック『Sayu』2014年 ワニブックス