不定期連載 さゆみんとわたし 第23回「宿命について」

とにかく寒かった。

寒さのあまり足先の感覚は無くなり、信号待ちのたび吹き付ける強風にうぅぅと小さな呻き声が漏れた。そんな自分を客観視して笑えた。この悪天候の中、はるばる新幹線に乗ってやって来てる自分。

 

公演を観ている間じゅう、あらゆることが頭を巡った。自分に近しい人たちのこと。仕事のこと。今ここで時間を共にしている人たちのこと。これまでのこと。これからのこと。

道重さんを観ていると、そういえばいつも自問自答をしている。自分はどう在りたいのか、これからどうしていきたいのか。そんな風に思わせてくれる存在は他にいない。道重さんに会いに行くという形を取りながら、実質的には自分自身に会いに行っているのか。

 

道重さんはいつでも100%道重さゆみとしてそこに居るけれど、わたしは何%ぐらいわたしで居られているだろう。自分の本心は何処にあるのか?分かろうとすることさえ忘れてしまっていないか。愛想笑いや、嘘や、誤魔化しに慣れてしまって。

人間の目標は、こうして自分自身を100%生きられることなのかもしれない。そのままの自分を、自分にも他人に受け入れられること。故に道重さんの公演は尊いのだと思う。

 

東京へ行く前に「宿命」という言葉の意味について調べると「前世から定まっている運命」とあった。ステージに立つ道重さんを観て、「これが宿命だ」と思えるようにすればいいだけの事なんだと思った。目に見えない不可抗力に怯えるより、自らの手で宿命を形成していけたらいい。これまで歩いてきた道の、そこかしこでキラキラと光る運命を拾い集めて。

そう思いながら今回の公演のロゴマークを見返すと、答えがそこにある気がした。