不定期連載 さゆみんとわたし 第25回「希望」

東京へ向かう新幹線のホーム、電光掲示板を見上げると「のぞみ」という文字があり、舞台の主人公と同じ名前の乗り物に乗っていくのかとしみじみ思った。買ったパンを食べ終え、いま思い浮かぶ希望をノートに書き出してみることにした。壮大なものから些少なものまで。3、4個までいくとペンを持つ手が止まってしまった。

 

コットンクラブはいつの間にかホームの居心地で、建物に入るや否や帰ってきたなぁという実感が湧き上がってきた。公演のことを考える精神的な余裕を持てずに今日を迎えたけれど、そうそうこれこれ!と本能が喜んでいるのが分かってホッとした。

ステージに道重さんが姿を表すと、実在した!という驚きをまず覚える。何度見てもまったく慣れない。動いてる。踊ってる。振りかざす髪の動きまで計算されたような美しさにしばらく放心するのもいつものこと。

希と望という一人二役の演じ分けを意識していることが伝わってきたけれど、今日も道重さゆみ道重さゆみでしかないことが何よりもすばらしいと改めて気づかされた。道重さゆみでいることに一切手を抜かない。それ故に最強。

1公演目を観終えて、これは道重さん自身の物語なのかもしれないなと2公演目を観ると、また違った解釈ができた。夢を叶えるまでと、叶えてからの苦悶。フレー!フレー!さゆみん!と心の中でコールを入れている自分に気づき、フレー!なんて運動会でしか使わない言葉が自然と浮かんできたのがおもしろかった。これからもこの人と同じ夢を見ていきたいなと思った。

 

今日泊まるホテルに向かう道中、ここにいる人たちは誰一人わたしのことを知らなくて、どこに行っても何をしてもいいのかと思うと不思議な気持ちがした。部屋に入り、荷ほどきをしてシャワーを浴び、もう一度ノートを開いてみると今度は次々と希望が思い浮かんできた。そのうちの大きな一つ、「カントリー・ガールズの単独公演に入りたい」という希望がもうすぐで叶えられることは、心からありがたいと思った。ヲタ活に関しては、これでもう思い残すことはない。東京には欲しいものは何でもある。でも、わたしのことを誰も知らないこの街では、わたしの希望は叶わないなと思った。

他人と他人が歳月をかけていつの間にか替えの効かない存在になって、そういう奇跡みたいな普通を守っていきたい。不自由さや限界を感じることもあるけれど、そこを理想郷にしていきたい。それこそがわたしの人生の希望だと、教わった一日だった。

 

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