不定期連載 さゆみんとわたし 第26回「Make a wish」

自分なりに考えて決めたものの、この緊急事態宣言下にコンサートへ行くということを大っぴらには出来ず、戦々恐々とした心持ちでなんばhatchへ到着した。今日はすっきりと晴れ渡って暖かく、会場外にはオレンジ色やピンク色を纏った人たちがまばらに座っていた。中に入ると入場とドリンクのコインの機械、それぞれに列がなされ、思っていたより人が多かった。入場するには「大阪コロナ追跡システム」の登録が必要で、立て看板に貼り出されたポスターのQRコードを読みとりメールアドレスを入力すると、返信メールが届いた。これだけでいいんかなと半信半疑な気持ちで画面を見せると、はいオッケーです、と次に通された。体温測定は黒いカメラのような装置で、気をつけをする間もなく大丈夫です、と一瞬で通過。受付で手を消毒をし、机の上にチケットを置いて見せ、ドリンクのコインを券と引き換えて会場に入った。

座席の間隔は椅子1個分ぐらいで、ゴソゴソとサイリウムを取り出すのに隣の人と当たるのを気にしないで済んだ。まぁまぁ密なので少し不安になったけど、職場や電車に比べると感染リスクはずっと低いはず、という半ば強引な持論を自分に言い聞かせながら開演を待った。前の席に来た方は夏焼さんのパーカーを着ていた。

暗転して袖から舞台中央へとスタスタと歩いてくる演者たち。さゆみんがそこにいることの驚きと、また会えた喜びが沸々と湧き上がってくる。来る前に調べると2019年11月のサユラン希望ぶりで、再生の時とは違う、どちらかと言うと初めて娘。現場に来た時のような、うわぁ...本物やぁ...という感動がしばらくリフレインしていた。一曲目のイントロから全神経は舞台上に総動員され、開演前の不安は気づけば何処かにかき消されていた。ここに更に夏焼さんが入る予定だったことを思うとゾクゾクしたけれど、今はしっかりと療養されてほしい。

記憶している限りPINK CRES.を見たのは初めてで、特に小林ひかるさんは、この方が梨沙ちゃんの友だちかぁとしみじみ嬉しかった。二瓶さんの躍動感のある歌唱と小林さんの優しい声のバランスが心地良く、煽りも上手くて曲も楽しいしすぐ好きになった。風神と雷神、助さんと角さん、大野くんと杉山くん、そんな安定感。声質が近いのか、小林さんの「しゃくり」が一瞬山木さんの声に聞こえ、元カノを重ねてるみたいで失礼だし申し訳ないと勝手に反省した。さゆみんが何故か小林さんに対してだけSっ気が強いのが面白かった。きっと羨ましがるだろうなと、また山木さんのことを思った。

ソロになって初めて見るどぅーちゃんは「工藤遥」という看板を掲げて勝負している姿がかっこよかった。時折見せる切なさ、弱さが、多くの人を惹きつけるんだろうなと勝手に納得した。ソロで歌っていたさゆみんがどぅーちゃんの横に立つと一瞬でモーニング娘。の顔つきになり、両方を堪能できるのがとても贅沢だった。「道重さゆみです!」とビシッと手を挙げての自己紹介や、「工藤」という名字呼び捨てや、随所随所で娘。時代を思い出してグッと来た。MC中に足がつっている道重さんを気遣いつつ、淀みのないトークで場を繋ぐどぅーちゃんは頼もしいナイトのようで。二人が生み出す空気が懐かしくて嬉しくて、やっと自分の中の'14ロスが融解していくのを感じた。こんな日が来るとは。

さゆみんの足については、MCに入るまでつっていたことに気がつかなかったし、最後の曲が終わって歩き方が違うのを見てはじめて、ずっと痛かったのかと気づいた。自分にはとてもじゃないけど出来ない。(次の公演は心配なさそうだったのでホッとした。)

短時間にあまりに多くの感情が渦巻き、少し緊張したまま終わった1公演目を経て、2公演目はリラックスして楽しむことができた。さっきは恐縮ながら近すぎて使えなかった双眼鏡を覗いてみると、さゆみんの不敵な笑みがすぐそこにあり、いけない事をしている感覚に襲われハッ!と思わず視線を外した。衣装替えをしてから再度双眼鏡を手にしてみると、今度は潤んだ目があまりにキラキラとしていて、嘘やん可愛すぎやん!とパニックになりながらやはり視線を外した。

満たされた気持ちでMCを聞いていると、さゆみんの口から「亀井絵里ちゃん」という言葉が発せられ、思わず体がビクッと退け反った。スタバのティーラテにハマっているというさゆみんに、オールミルクのカスタマイズを「絵里が」おすすめしてくれたとのこと。亀井さんがあのかわいい声でオールミルクのイングリッシュ・ブレックファストを注文している光景を思い浮かべると、心があたたかくなった。飽和状態な所に「さゅぇり」という恩恵まで授けられ、神様は一体わたしにどうしろというのかと困惑してしまった。辛いことや思い通りにならないこともあるけど、こんなにいいこともあるのが人生。だからがんばるようにと、言われているように思った。

さゆみんを見ているといつも、不思議と自分自身に向き合っている。もっと好きなことをしていいし、好きな所に行ってもいい。本当は何がしたくて、本当はどこに行きたいのか。周りの人を大事にするには、何よりまず自分を大事にすること。また会える日までそのことを忘れませんようにと、ピンク色の光に願いをかけた。